本研究では、近年最も急速に普及したと考えられる『モバイル通信』を取上げることにし、これが生活行動パターン形成に与える影響を計量的に捉える分析手法を提案することを目的とする。そこで、本研究では、以下の4つの研究課題を設定する。 (1)三通論(交通論、流通論、情報通信論)のレビューと研究展望 (2)モバイル生活行動実態把握のための調査分析手法の開発 (3)1日の予定行動の調整過程のモデル分析 (4)モバイル通信の生活行動パターン形成への影響把握と今後の社会基盤整備のあり方 本年度においては、まず、本研究の準備研究として実施した大学生対象のモバイル生活行動調査(以下、SCAT)分析結果をもとに、モバイル生活行動調査手法の開発における主要な検討課題を抽出して、本研究の全体フレームを確認した。この準備を整えた上で、(1)三通論(交通論、流通論、情報通信論)のレビューと研究展望、(2)モバイル生活行動実態把握のための調査分析手法の開発、(3)1日の予定行動の調整過程のモデル分析を行った。このうち、課題(2)では、具体的なSCATの調査設計及びその実施と基礎集計分析を行う。なお、調査対象は、世帯単位を基本とし、モバイル通信における世帯構成員間の相互依存性についても新たな分析視点に据えて行った。また、課題(3)の1日の予定行動の調整過程のモデル分析においては、1日の中であらかじめ予定されていた活動の内容、時刻、時間、場所といった意思決定事項がモバイル通信による情報の受発信を通じてどのように決定していくかをモデル分析する。具体的には、ADデータと通信記録データをもとにデータマイニング手法を適用しながら、意思決定過程におけるルールの探索と検証を行った。
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