研究課題
SCGE (Spatial Computable General Equilibrium)モデルは、経済一般均衡理論に基づく理論的厳密性と産業連関表を基礎データとする現実性によって、その適用の範囲は地域経済の因果構造分析のみならす、地域間輸送の効率性の改善効果あるいは防災投資の経済効果の評価等へ広がりつつある。宮城によって提案されたSCGEモデルは全国産業連関表を基準均衡データとして用い、地域間産業連関表を作成しようとするものであり、地域ごとの粗付加価値額や生産額等はかなりの精度で再現可能であるが、地域間交易額の推定には問題を残していた。より精度の高い地域間交易の推計を行うためには、地域間交易表を基礎データとする必要があるが、わが国では9地域間産業連関表が整備されているに過ぎない。この問題点を解決するため、全国都道府県産業連関表の作成とそれを応用したSCGE分析の可能性を検討することが本研究の目的である。得られた結論を以下に概要する。1)全国都道府県産業連関表の作成とその応用:47都道府県の地域内産業連関表は得られているのでそれに整合する地域間産業連関表を作成することを目的とする。従来型のRASモデルでは、地域内表も変形してしまうので問題がある。そのため地域間交易係数を与えて、それを地域内表に整合するように逐次修正する手法を開発した。産業部門は45部門とし、地域間交易係数については、農林水産業、鉱業、製造業については全国物流調査を基に、また、商業等についてはNTTのコール数等を利用するなど、何種類かの関連指標を用いて地域間交易係数の第一次推定値を求め、それを各都道府県の産業連関表の中間投入、最終需要に合致するように地域間産業連関表を作成した。結果として得られた地域間産業連関表は生産額ベースでほぼ1%以内の誤差に収束した。誤差が大きいところは絶対額が小さい地域と産業部門であり、部門の集計化を行えば実用上、問題にはならない程度である。このデータを用いた地域間産業連関分析を行った結果、従来のデータでは明らかにされなかった地域間相互依存性にかんする重要な知見を得ることができた。2)SCGEモデルへの応用可能性:地域間産業連関データを基礎データとする場合のSCGEモデルのキャリブレーション手法を検討した。1)において作成されたデータは47地域×45部門であり、400万以上の要素をもつ行列となるため、キャリブレーション手法を検討するための基礎データとしては重すぎる。そのため、経済産業省が公表している9地域×3部門のデータを利用した。与えられた基準均衡データのタイプに応じたキャリブレーション手法を開発したが、地域間産業連関表が利用できる場合には、それを完全に再現できることが分かった。
すべて 2004 2003
すべて 雑誌論文 (6件)
Selected Proc.of 44^<th> Congress of the ERSA CD-ROM, NO.432
ページ: 21
MPECに基づく交通・地域政策分析(勁草書房出版)
ページ: 19-31
地域学研究 Vol.34,NO.2
ページ: 137-153
地域学研究 Vol.34,No.1
ページ: 139-152
応用地域学研究 Vol.8,NO.2
ページ: 15-31
土木計画学研究論文集 Vol.20,NO.1
ページ: 87-95