福井における酸性雨は、欧米や中国に大きな被害をもたらしている酸性雨と強度でそれほど大きな差はないが、福井で被害はまだ現れていない。このまま影響はないのか、あるいは被害が出るとすればいつ頃からかを明らかにしようと研究を開始した。今までの筆者の研究で、わが国、ことに福井に到達する酸性降下物原因物質の発生源が東アジアの国別におおよそ特定されている。特に中国の寄与が年間平均で約7割に達する。負荷発生量は経済成長率に関係し、同国は年率6%を越すはげしい成長をしているので、福井の酸性雨も将来強度を増すことが心配される。まず福井に到達する空気の流線を求め、その下で発生する酸性雨原因物質である硫黄酸化物(SO_2)と窒素酸化物(NO+NO_2)とが拡散移送されながら、ゆっくりと硫酸(H_2SO_4)と硝酸(HNO_3)に酸化され、福井に到達する過程を解析し、福井に沈降する硫酸と硝酸の量と降雨量からその濃度を求めてpHを推定した。これと福井工業大学の屋上で実測している醸性雨のpHとを比較したところ、あまり良い一致は得られなかった。これは酸性雨を中和する大気中のアンモニアや黄砂の影響によるものと考えられる。そこで大気中のアンモニアのデータを集め、また平成16年2月よりHigh Volume Air Samplerで福井に飛来する黄砂を採取し、実験的にこれらの影響をpH推定に組み込もうとしている。もし退去の酸性雨pHの実測値と推定値を一致させることができれば、東アジア各国における酸性雨原因物質負荷発生量の将来推定から福井における酸性雨性質の将来、ことにそのpHを推定することができるものと思われる。
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