コンクリートの空隙形態を調べるため、ガリウム圧入法とEPMAによる画像観察手法を援用し、その空隙が及ぼす透過性を調べるために、塩化物イオン移動の測定と空隙画像情報を基にした数値計算を行った。 1)水セメント比30、45、60%のセメントペースト試験体を作製し、材齢は7、28日とした。この試験体の空隙をガリウム圧入による手法とEPMAによる元素分析法を併用した空隙測定法により調べ、以下の結果が得られた。 材齢7日の試験体はどの水セメント比でも空隙を示す画素部分が多く見られる。すなわち、材齢7日では、まだ粗な構造であることが示された。水セメント比の影響については、水セメント比の小さい30%の試験体はまばらに空隙を示す画素が観察されるだけである。逆に水セメント比60%の試験体は大部分が空隙を示す画素部分で占められており、空隙が多く存在していることが示された。 2)空隙画像のみから塩化物イオンの硬化体中への浸透深さを推定する方法について検討した。塩化物イオン浸透モデルは一方向のみ浸透するものとし、浸透理論に基づいてその粒子を自由拡散させ、移動時間と移動距離を計測することにより浸透深さを計算した。 その結果、水セメント比60%材齢7日の場合、局所的に粒子が短時間で表面からかなり深くまで浸透した。また、浸透経路は限定的であり、有る特定の連続した経路を卓越して浸透することが確認できた。一方、水セメント比30%材齢28日の試験体は時間が経過してもそれほど深くまで浸透しない結果となった。 3)塩化物イオンの浸透の実験結果と空隙画像から推定した結果を比較するとほぼ同様の結果が得られたため、塩化物イオンの浸透深さは空隙画像から推定することが可能であると考えられる。
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