研究概要 |
耐震診断基準の残存軸耐力の規定が妥当であることを直接実験により確認することを目的とし、耐震診断時によく問題となる比較的低強度のコンクリートの柱を対象とし、軸力比、せん断補強筋比、主筋量を固定して、柱高さをパラメーターにすることによって、極脆性柱、せん断柱、および曲げ柱を作成し、水平載荷時の残存軸耐力の推移を把握した。極脆性柱では、pw<0.2%、0.2≦pw≦0.4の範囲で残存軸耐力が耐震診断基準の仮定の値を上回り、0.2≦pw≦0.4の範囲において安全側と評価できた。せん断柱では、pw<0.2%、0.2≦pw≦0.4の範囲で靭性指標値F=1.27、2.32に相当する変形で、実験値が仮定の値を上回った。曲げ柱では、pw<0.2%の範囲において、F=2.0,3.0に相当する変形で、実験値が仮定の値を上回った。また、0.2≦pw≦0.4の範囲では、F=2.0では仮定の値を大きく上回ったが、F=3.0では仮定と同じ値となり、曲げ柱は0.2≦pw≦0.4の範囲において安全側と評価できるが、F=3.0での仮定値には余裕がなかった。このように、耐震診断基準の残存軸耐力の仮定値は、比較的低強度のコンクリートの場合においても、余裕度に差はあるものの柱の破壊形式によらず、概ね安全側の規定となっていることが確認された。
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