研究概要 |
持続可能な発展を目指した節約型・循環型社会を構築するためには,一般構造技術者によって設計される一般的な構造物についても長寿命化を推し進め,良質な社会ストックとして整備しなければならないが,従来の構造設計法には供用期間の概念が無く,新たな構造設計法/性能評価法が必要となる。信頼性理論に基づく限界状態設計法は,供用期間,目標性能水準,荷重や耐力の不確定性を反映した安全率(荷重・耐力係数)」を用いることが出来るが,日本建築学会刊行の「建築物の限界状態設計指針」における荷重耐力係数の略算法では,基準期間は50年と固定されている。また,寿命が長くなると,構造耐力の経年劣化と点検・補修・補強の効果も考慮に入れる必要があり,昨年度は耐力劣化を,これを確率的に等価な定数である劣化影響係数に置き換える信頼性解析手法の枠組の構築と劣化影響係数の簡易評価法の提案し,その精度と適用性について検討した。 本年度は,基準期間を固定する原因となっていた基本確率変数の対数正規近似を避けて,AFOSMを直接適用するために,(1)基準期間中の最大値の確率分布関数,(2)確率分布関数の逆関数,(3)正規確率分布関数の対数のそれぞれについて略算式を提案し,任意の基準期間や目標信頼性に対応した荷重・耐力係数を簡便に算定する手法を示した。この手法では,AFOSMを直接適用することで,従来の方法に比べて精度も向上し,安全率を10%程度減少させることができる。さらに,荷重効果や耐力を表す確率変数の相対的な「重み」を示す分離係数の略算法について,その精度を検討し,分離係数の評価精度についての安全率の意味を明確にした。
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