本研究では、微動を用いた簡便で高精度な浅部S波速度構造探査法を確立することを目的とする。この目的のため、本研究ではまず観測方法・観測機器の改良を行い、簡便で機動的な観測を可能にすることを考える。本年度はそのために既往の観測機器のうち、現在オンラインでデータ収録ができないデータロガー部分を、ノート型PCとPCMCIAカード型AD変換装置を組み合わせることにより、オンラインでデータ収集が可能となるようにしたデータロガー部分の代替システムを開発した。それに先立って各種のAD変換装置を調査した結果、National Instruments社の8チャンネル16BitのAD変換カードが本研究目的に最適と判断されたので、それを用いてシステムを組み上げることとした。データ収録ソフトとしては同社のLabViewを用いることとし、そこに微動収録システムと微動データ解析システムを載せることとした。このシステムにより、任意の時間に任意の長さのデータを収録でき、その波形をオンラインで見ながら任意のサイズに区切ってフーリエ変換し水平成分と上下成分の比を時々刻々計算できるようになった。この機器の開発と平行して、観測データの分析手法の検証のための基礎的データの収録を福岡県のKiK-netサイトにおいて行なった。得られた結果は現在分析中であるが、少なくとも耐震設計で考慮すべき表層20mまでに存在する工学的基盤より上面の低S波速度の層については、観測した微動のH/V比とRayleigh波の理論H/V比を対応させることによって推定できるという見通しを得た。
|