研究概要 |
1994年のNorthridge地震、および、1995年の兵庫県南部地震によって、鋼構造骨組は未曾有の被害を受けた。特に、鋼構造骨組の多くに梁端の破断が認められたことは、現在の鋼構造骨組に関する重大な問題点の暴露となった。本研究は、広範な地震応答解析結果に基づいて、梁端接合部に要求される必要性能を明確にするものである。 本研究ではまず、既に開発していた一般化ヒンジ法による非線形地震応答解析プログラムを用いて,現行の耐震規定に従って設計された15の骨組の40波の強震記録に対する応答解析を行い、各層の最大層間変位角と梁端に生じる塑性回転角との関係を定量化した.この研究によって、設計の初期段階で、地震時の最大層間変位角が指定されれば、その時点で梁端に要求される必要塑性変形性能も明確になるようにしている。 次に、梁端の(巨視的)歪度履歴や応力上昇を評価するため、1次元有限要素法による非線形地震応答解析プログラムを開発した。材料の応力度-歪度関係としては、等方硬化と移動硬化を考慮できるように、京都大学辻文三教授らの提案するIKモデルを採用している。このプログラムを用いた地震応答解析結果に基づいて、最大層間変位角と梁端の応力上昇率(最大曲げモーメントと全塑性モーメントの比)の関係を数式表示した。この結果は、現在改訂作業中である日本建築学会鋼構造接合部設計指針にも採用される予定である。 以上に述べた梁端挙動の他、柱脚に生じる塑性変形に関しても同様の検討を行っており、最下層の最大層間変位角と柱脚に生じる塑性変形との関係を明確にしている。また、本研究は、梁降伏先行型の骨組を対象とするものであるが、梁の降伏が先行させ特定層への損傷集中を抑制するために必要な柱梁耐力比に関しても検討を行った。
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