研究概要 |
本研究の目的は,開発途上国において地震に強い安全な住環境づくりのため,中南米諸国の組積造建築に多用されている壁体の代表的な構造形式である枠組組積造壁体(粘土焼成れんがまたは空洞コンクリートブロックにより構成される無補強の組積造壁体周辺を現場打ち鉄筋コンクリート造の柱と梁部材等で補強する構造方式で,同様の方式が現代の中国でも採用されている地域がある)を採り挙げ,ローコストで耐震的な組積造壁体の開発を行うとともに,地震国である開発途上国に多数存在している無補強の既存組積造建物に対する有効な耐震補強法の開発を行うことである。 研究の初年度である平成15年度は粘土焼成れんがを用いた枠組組積像壁体を対象とし,壁体内の配筋方法を異にする実大の約1/2スケールを有する曲げ破壊先行型の試験体を8体に対して2種類の一定鉛直軸方向力の下で繰り返しの水平加力実験を行った。その結果,れんが壁体と周辺の鉄筋コンクリート造拘束柱の間に配筋される中国式の連結と,れんが壁体内に連続に配筋される水平方向補強筋のそれぞれの存在は,枠組組積造壁体の曲げ耐力の向上には有効ではないが,壁体が曲げ降伏した後の変形性能の向上に有効であり,特に軸方向力が低い場合にその効果が顕著であることがわかった。また,枠組組積造壁体の脚部が曲げ破壊する時の水平荷重は,鉄筋コンクリート造の拘束柱の主筋を端部曲げ補強筋と見なして既往の補強組積造壁体の曲げ強度算定法に基づいて推定可能であることなどを明らかにした。
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