初年度は小型鉄骨造モデルの制御を対象とする最大荷重約300Nのダンパーを新たに設計製作して正弦波繰り返し加力により基本特性の把握を行った。また、同ダンパー力学特性をビンガムモデルとして模擬できることを、ランダム加力実験等により確認した。続いて、5層の鋼製小型フレームを製作し、フレームのみ、およびフレームに小型のパッシブオイルダンパー(速度依存型)、を設置した場合それぞれに対して減衰性能評価を行い、推定精度の向上を多面的に検討した。さらに、MRダンパーを1層のみに設置して、種々のアルゴリズムに基づくセミアクティブ制御による制振効果の検証を行った。周期の短い構造の振動制御においては、MRダンパーの電流印加に対する反応の遅れが制御効果を低減させる可能性もあることがわかった。 第2年度は、前年度の製作した小型鉄骨造5層モデルを上部構造としてセミアクティブ免震制御の有効性を検証することを目的とした。はじめに、前年度に製作したダンパーと同じ構造をもち、ストロークを免震用に拡大して最大荷重を100N程度とする超小型MRダンパーを設計製作し、その性能を検証した。正弦波繰り返し加力により基本特性の把握を行い、ビンガムモデルとして力学特性を模擬できることを、ランダム加力実験等により確認した。また、三角波による定速度加力中に、電磁石への印加電流を急変することに対するダンパー抵抗力の追従性を検討し、免震建物モデルの制御に関しては、十分な反応速度を有することを確認した。一般的な免震建物では、積層ゴムの変形に伴うシステムの減衰定数は2〜3%であるので、実験用の転がり支承の減衰を可及的に小さくするために、鋼鉄製のV溝を同じく鋼鉄のベアリング転がせる方式を採用することで約3.5%の低減衰を実現した。本研究では、地震入力に対する応答の低減を目標として、建物モデルの振動半サイクル入力エネルギーをMRダンパーにより吸収して、上部構造の大きな加速度応答を抑制すると同時に、免震層の変形を抑えることを目的として制御を行った。古典的に適用される瞬間最適制御による効果との比較検討により、本提案手法の有為性を確認した。解析および振動台実験でもそれを実証する。
|