本研究は、缶詰などの食品加工業から排出され、産業廃棄物として焼却あるいは埋立て処分されている果実の核(種)の、建材としての有効利用を目的としたものであり、その開発・実用化に向けた基礎研究を行った。平成15年度は、電気炉を用いて桃果実核を炭化し、その温度条件が炭化物の性質に及ぼす影響について検討した。平成16年度では、桃果実核以外の炭化物についても同様の試験を行い、加えて室内汚染気体の吸着性能の評価を行った。さらに、炭化物における特性値間の関係を分析した。得られた結果の概要は以下の通りである。 検討した汚染気体はホルムアルデヒド、アンモニア、トルエンおよびキシレンであり、空気捕集用バッグとガス検知管を用いて汚染気体濃度の経時変化を測定し、これによって汚染気体の吸着性能を評価した。その結果、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンについては、炭化温度の高い試料ほど初期の吸着速度が迅速であった。市販の備長炭と比較し、高温で炭化した果実核の吸着性能は高く、果実核および低温で炭化した場合では低かった。一方、アンモニアの濃度低減については、炭化温度の低い試料ほど初期の吸着速度が迅速であった。 吸着性能とその他の諸物性との関係を分析したところ、トルエンおよびキシレンについては、直径10nm以下の細孔量が多い場合ほど細孔量が増加する傾向が認められた。一方、ホルムアルデヒドおよびアンモニアについては、吸着性能と細孔構造との間に明確な相関は認められなかった。ただし、アンモニアについては、pHが大きい場合ほど初期のアンモニア吸着性能が優れていることが認められた。炭素/酸素含有比(C/O)および炭素/水素含有比(C/H)は、炭化物の種類によらず真密度および質量減少率との間に相関が認められ、簡易的に炭化度を推定するための指標として有用であることを確認した。
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