研究概要 |
(1)既往の実験資料に基づく曲げ降伏先行RC柱の経験部材角と残留変形角の関係 過去10年間の一定軸力下の正負繰り返し水平力載荷実験資料に基づいて,曲げ降伏が先行したRC柱の荷重変形履歴応答曲線から,経験部材角と残留変形の関係を検討した。その結果,両者のおよその関係を定量的に明らかにし,経験部材角が1〜2%を超えると,残留変形が増大する傾向があることを示した。また,両者の関係に及ぼす各実験変動因子の影響については,コンクリート強度が高くなると残留変形が小さくなること,軸力比が大きくなると残留変形が大きくなることなどが明らかになった。 (2)アンボンド主筋を用いたRC柱の荷重変形履歴性状 主筋にアンボンド高強度鉄筋を使用した柱の一定軸力下の正負繰り返し水平力載荷実験から,これらの柱は通常の鉄筋を主筋とした場合に比べて水平せん断耐力が小さくなるが,経験部材角が3%程度まで,除荷後の残留変形はきわめて小さいことが実験で実証された。また,破壊領域が柱頭・柱脚に限定されるので,この部分を鋼管で被覆すれば安定した履歴性状を示すこともわかった。主筋を柱高中間で定着すれば,多少の水平せん断力の上昇がみられること,変形の増大とともに徐々に耐力も上昇することなどがわかった。 (3)側柱にアンボンド主筋を用いたRC耐震壁の荷重変形履歴性状 側柱の主筋量によりせん断余裕度を変化させた無開口耐震壁について,一定軸力下の正負繰り返し水平力載荷実験を行い,主筋の付着の有無が耐震壁の荷重変形履歴応答に及ぼす影響を実験的に検討した。実験の結果,せん断余裕度が大きい試験体では,主筋の付着がないとかなり靭性が改善されることがわかった。一方,せん断余裕度が小さいと,余裕度の大きい試験体ほどの靭性の改善はみられないことがわかった。また,付着がないと柱の損傷が少なくなることもわかった。
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