本研究は、(1)高架道路や盛土・切土道路など、沿道とレベルが異なる道路に面した地域における建物群による道路交通騒音減衰量の予測方法を提案し、(2)それに基づく騒音予測プログラムを開発して公開するとともに、(3)開発したプログラムを応用した騒音予測シミュレーションを行い、道路構造や沿道の建物配置のプロトタイプごとに沿道における騒音レベルの分布状況を提示することを目的としている。 本年度は研究目的(1)を行った。これまで、平面道路に面した戸建て住宅地を対象とした住宅群による道路交通騒音減衰量を予測する独自の方法を提案してきたが、これを音源の高さが変化する場合にも適用できるよう拡張することを目指した。すなわち、音源、受音点ともに高さ0.5m点にある場合の騒音減衰量をベースにして、音源の高さが変化したときの騒音変化分を加算するという考え方に基づいて、音源の高さを考慮した騒音減衰量の予測式を提案した。そして、模型実験により、提案した予測式の有効性を検証した。ただし、音源や受音点が建物高さに近づくと予測式はやや小さめの減衰量となる(騒音が減衰しない)傾向が認められるため、予測精度を向上させるにはこの点を改善する必要がある。 提案した予測方法は、平面道路だけでなく盛土道路に面した地域においても特定点の騒音を求めることが可能であり、実際の建物配置に対応した騒音レベル分布が得られ、より現実に即した環境評価が可能である。また、簡単なパラメータだけで予測でき、「騒音に係る環境基準」で規定されている、地域の環境基準の達成状況を面的に把握するという新しい環境評価方法への適用も容易である。
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