本研究では、戸建住宅における居住状態での化学物質屋内濃度の履歴を把握するために、新たに開発した窓開巾記録器による窓開放習慣の把握と共に、窓の開閉に関係する温湿度、換気測定、室内空気質の測定を行って年間性状の実態を把握し、その結果を用いて、居住空間及び構造内部空間の温湿度、発生源中の含有量減少による発生能力の減少、建材の吸着脱離の影響、換気経路を考慮した長期の温熱・換気回路・濃度非定常シミュレーションを行って、換気方式や窓開放習慣が居住者吸気濃度の履歴に与える影響を明らかにすることを目的としている。 16年度は、北海道2件、北陸1件、北東北2件、南東北3件、関東2件、関西3件、四国1件の合計14件の住宅(戸建12件、共同2件)の主に開放する窓2〜5カ所に窓開巾計を設置して、約1年の窓開閉状況及び室内温湿度等の測定を行い、各季節、室用途及び地域による開閉パターンの把握を行うと共に、窓の開放程度の年間推移を把握した。また、この対象の内2物件については、CO2等の室内濃度を連続測定し、窓の開閉との関連性を把握した。窓の開閉パターンは、外気温度などの周囲環境ばかりではなく、むしろ生活スケジュールによって決定されている傾向が強いことが示された。窓の開放率は、中間期で10%程度、夏期においてもほとんどの場合に30%以下で、閉鎖傾向が強い実態が確認された。窓開閉のモニター結果を基に、防犯性、外気温度、生活スケジュールなどを考慮した窓開閉のフローチャートを作成し、それによる窓開閉のシミュレーション結果と、モニター結果を比較して、想定したメカニズムの検証を行った。その結果においても、生活スケジュールの影響が強いと共に、夜間閉鎖の習慣が開放時間に大きく影響することが確認された。
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