本研究では、戸建住宅における居住状態での化学物質屋内濃度の履歴を把握するために、新たに開発した窓開巾記録器による窓開放習慣の把握と共に、窓の開閉に関係する温湿度、換気測定、室内空気質の測定を行って年間性状の実態を把握し、その結果を用いて、居住空間及び構造内部空間の温湿度、発生源中の含有量減少による発生能力の減少、建材の吸着脱離の影響、換気経路を考慮した長期の温熱・換気回路・濃度非定常シミュレーションを行って、換気方式や窓開放習慣が居住者吸気濃度の履歴に与える影響を明らかにすることを目的としている。 17年度は、平成16年度から開始した測定で得られた、11件の住宅(戸建10件、共同1件)の窓開閉実態に関するデータ及び3物件のCO2、ホルムアルデヒドの室内濃度の連続データを用いて、窓の開閉と室内濃度の関係を分析し、平成16年度の検討で得られた窓の開閉パターンと室内濃度の関係を確信した。さらに、戸建て住宅の隙間ネットワークモデルを用いて、生活スケジュールと窓開閉調査から得られた特性を考慮した非定常熱負荷換気汚染濃度の数値実験を行い、CO2、ホルムアルデヒド、天井裏と床下でそれぞれ発生させたトレーサーガスの空間移動、空間濃度等を計算した。建物気密性能、換気方式によって、各濃度等の年間推移に差異があると共に、夏期の窓開放によって特にホルムアルデヒド濃度が低下し、秋以降の濃度の抑制にも寄与することが確認された。また、換気方式によって内部空間からの汚染物質の侵入状況が変わり、第3種換気における侵入程度が高いことが確認された。このような内部空間からの侵入物質についても、窓開放によって室内濃度が低下するが窓開放の実態を踏まえたこの結果では、冷房を行わない想定でも夏期の月平均濃度は無視できない程度であった。以上により、現状の窓閉鎖傾向が室内空気汚染の要因となっており、長期の室内空気汚染に対する対策として夏期の窓開放が重要であることが確認できたと考える。
|