研究課題
基盤研究(C)
本研究では、測定対象建物模型の測定面に濾紙を貼り付け、その部分に含ませた水分の蒸発量を精密電子天秤で秤量するという独自の交換係数実験方法を駆使し、対象模型の形状や、周辺建物配列による影響を風洞実験により系統的に検討した。この手法は、放射や伝導によやフラックスが存在する熱現象とは異なり、対流フラックスのみを容身にかつ高精度に測定できるのが特徴である。具体的な内容は以下の通りである。1.立方体3次元配置における面内交換係数分布の測定を行った。街路空間の縦横比を変え、建ぺい率と面内分布の関係を明らかにした。さらに、風向変化による検討も行いその影響を把握した。2.建物形状は建物配置と同様に周辺気流を決定付ける上で非常に重要であるが、屋根の有無および勾配と交換係数についてなされた研究例は少ない。そこで、2次元配列における屋根勾配の差異による面内交換係数分布の測定を行った。屋根形状は切妻屋根とし、街路空間の縦横比と屋根勾配を系統的に変化させて測定を行い、各面における詳細な交換係数分布を把握した。3.「高さの不均一」の効果を検討するため、2次元配列において、建物高さを段違いとした場合の交換係数分布を詳細に検討した。4.一方、以上のような単純均等配列の結果が現実の複雑な市街地の状況をどれほど再現しているかは不明である。そこで、実物を1/750に縮小した実在都市模型を用いて空間的なばらつきの大きさを測定した。以上の成果は、これまで全く存在しなかった都市域における基本的な幾何学形状に対する交換係数の振る舞いを明らかにしたもので、いわゆる都市キャノピィーモデルの検証データとして、非常に有用なものと考えられる。
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日本建築学会環境系論文集 第594号(印刷中)
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