空気中の浮遊真菌はアレルギーなど健康問題を引き起こすことがあるが、現在真菌採取に使用される各種エアサンプラーは、比較的高価で動力を必要とし、長期データの大量収集には不向きである。そこで、データの蓄積と居住者自身による汚染状態の把握のための、簡易なモニタリング方法の開発を目的として、比較的長期間曝露した垂直捕集材に付着した浮遊真菌を直接培地面に採取する方法を基本に研究を進めてきた。昨年度までに、採取者の個人内・採取者間に有意差はなく、PET材が測定値の変動係数を小さくできることを示している。 平成16年度は、(1)曝露期間と採取量、(2)風速と採取量、(3)帯電量と採取量、(4)帯電量と湿度の関係について検討した。このとき、捕集面に垂直に当たる気流速度と捕集面接触した胞子の捕集面付着率の積を相当サンプリング係数と定義した。以下に各項目の検討方法と結果の概要を記す。 (1)11軒の一般住宅、各3室にて4週間に渡り測定を行った。結果、提案した簡易真菌測定法では、浮遊真菌の採取量は曝露期間が2週間以上の場合、曝露期間に比例せず、7〜14日間が最適捕集期間と考えられた。 (2)居室ドア面を利用して捕集材を曝露し、回転軸からの設置距離によって異なる風速の影響を調べた。結果、風速が大きいと相当サンプリング係数が減少することがわかった。 (3)PET、ナイロンなど5種類の捕集材について帯電量と相当サンプリング係数の関係を調べた結果、帯電量が大きいと相当サンプリング係数が大きくなることが明らかになった。 (4)相対湿度35%以上ではPET材の帯電量は安定して低く、通常の室内環境であれば帯電状態の影響は少ないことを示した。 今後は簡易測定法としての精度を明らかにし、一般環境実測における誤差の出現(トラベルブランク、設置位置差)について検討を行う。
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