空気中の浮遊真菌はアレルギーなど健康問題を引き起こすことがあるが、現在、浮遊真菌採取に使用される各種エアサンプラーは、比較的高価で動力を必要とし、長期データの大量収集には不向きである。そこで、データの蓄積と居住者自身による汚染状態の把握のための、簡易なモニタリング方法の開発を目的として、比較的長期間曝露した垂直捕集材に付着した浮遊真菌を直接培地面に採取する方法を開発した。 17年度は前年度までの成果として、付着真菌の測定における測定者の個人内差、測定者の違い、壁面の材の違い、風速の影響、帯電状態による違いについて検討した結果、相対湿度40〜70%、風速0.5m/s以下の室内環境では、風速、帯電状態の影響は小さいことを国内外の学会で発表した。 また、この簡易測定を郵送によって行えるように、方法の改良を行った。実施者に対するアンケートおよび測定結果から、郵送方式では無効測定が40%を超え、その主たる原因がトラベルブランク(14%)、培地で採取する時の圧力の違い(22%)であることを示した。これらの原因による測定誤差を小さくする方法を検討し、以下のような結果を得た。 トラベルブランクが大きくなる原因は実施者による滅菌が不完全なためと考え、エタノールを含浸した綿を入れたサンプラーケースを作成した。また、採取時の圧力の違いをなくすため重りを乗せて、25g/m^2の圧力で採取する方法を考案した。この方法をPassive Fungi Sampling Method (PaFS)として、予備実測を行い、測定精度が上がったことを確認した。さらにこの方法を用いて、口頭で方法を説明する実測と郵送方式(紙面による説明)による実測を行い、トラベルブランクが1cfu、変動係数0.3以上を無効測定とした場合、無効測定を20%に抑えられることを示した。
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