研究概要 |
本研究は、従来の"単一音源"を前提とした音場評価手法を発展させ、(1)実際の演奏会における音場条件、すなわち"複数の音源"によって構成される演奏形態や楽器の特性といった音源側の諸条件を考慮に入れた、より現実的な音場評価システムを研究し構築しようとするものである。さらに、(2)従来から用いられている単一音源による音響指標の適用限界について見極め、聴取者が演奏会で感じる主観的印象そのものに対応した合理的な評価指標について明らかにしようとするものである。 本年度(2003年10月追加採択決定)は、1.複数音源に対応可能な音場評価システムに関するハードウェアの構築、並びに、2.システムの調整と予備実験を実施した。 従来の音源1系統入力による音場合成手法に対して、本研究では、舞台上の複数の楽器群によって生成される演奏会音場を合成するために、音源の再生系統を複数個設け、数種の楽音ソース(例えば、室内楽を想定する場合、1stバイオリン,2ndバイオリン,ビオラ,チェロの4つの楽音ソース)を同時再生するシステムを構築した。即ち、多チャンネル実時間畳み込み処理装置により、音源ソースごとに方向別インパルス応答を畳み込み、出力された結果を同一方向ごとに加算後、各方向の出力系へ送出するという方式とした。また、これらは、パーソナルコンピュータにより一括制御可能とした。 ハードウェアの構築後、システムを適正に稼働させるために、周波数特性の補正、系統ごとのレベルバランス・ノイズ等の調整を行った後、予備的な聴感試験を行った。さらに、モデル化した室インパルス応答(CADシミュレーションにて算出)を用いて合成した音場において、室内音響量の測定と分析を行いシステムの物理性能を確認した。 今後、本システムを用い、演奏形態や音源(楽器)の特性が聴覚事象に与える影響を中心に、実験検討を進めていく予定である。
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