近年高齢者サービスの供給主体となった市町村において、これまで別々に体系づけられてきた保健、医療、福祉を連携して一元的、効果的な地域サービスを提供する拠点としての施設整備が急速に進められている。本研究は、従来、整備されることの少なかった小規模自治体における高齢者関連施設の整備特性について、前年度は、施設間距離を指標とする地域的な整備類型として地理情報システムGISの援用により統計的に明らかにした。引きつづいて今年度は、その中から関連する施設群を1か所に近接・併設させる集約的整備の型が近年の地域的整備手法の特徴的な型であることに注目してその施設間連携について事例的に明らかにしようとしたものである。以下に得られた結果を要約する。 3分野施設の集約型に注目して整備過程等を詳細に調べ、集約化要因について定性的に検討している。各事例とも、保健・医療・福祉を連携して住民の健康と福祉の向上を図ろうとする明確な計画目標をもって集約化によりその実現を図ろうとしていること、既存の病院の移転新築や病院隣地の確保あるいは新設など病院整備が集約化実現の焦点になっていること、などの知見を見出している。 集約型において人、もの、情報による比較的活発な連携が認められるものの、それが施設内サービスに限定された連携に止まり広く地域への包括的サービスの提供に結びついた連携にまで到達していない問題を施設職員の意識調査から明らかにした上で、集約化が連携の仕組み構築を促す効果的な契機になり得る可能性について述べている。
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