1.都市内の土地利用の空間相関関係を表す空間相関関数を、昨年までに構築した基本モデルより理論的に導出した。空間相関関数の導出については、敷地が線状に連なる場合には解析解を導くことが可能だが、2次元都市空間の場合は解析解を得ることが困難であり、物理学における平均場理論を活用することで近似解を得ることができた。実際の都市データよりパラメータ推定を行なってみた結果もデータと極めてよく一致していることが分かった。 2.地震等災害の後での復興過程の土地利用変化を、昨年度までに構築した基本モデルを用いて、解析することを試みた。まず、被災することで、都市内の土地利用がランダムに変更される士地利用被災変化過程を表す確率モデルをつくり、さらに被災後の建築資材等の予算制約下で各自が自身の利益を最大化する過程を定式化した。すると、被災後の土地利用変化は、理論的に「被災以前の土地利用パターンに被災というランダムノイズを与えた土地利用パターンから、被災以前のパターンを、ベイズ推定するプロセス」と等価であることが証明できた。この事実は、被災後に強制的な復興事業がなく住民の自由な振る舞いのもとでも被災以前の土地利用パターンに復帰しうる可能性が存在することを示している。実際の復興事業においては、こうした自己修復傾向を無視することのない計画がのぞまれる。 3.被災復興プロセスのコンピュータシミュレーションモデルを作り、シミュレーション実験を行い、上記の自己修復的傾向を確認した。
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