1.基本モデルの一般化 昨年度まで開発してきた確率論的都市モデルにおいては、理論的見通しをよくするため、土地利用の用途は2種類しかない場合で定式化していた。より現実的なモデルとするため、土地利用用途がn種類ある場合のモデルに再定式化することを試みた。都市状態の「アンサンブル」という統計的概念を導入し、確率論的都市モデルの性質を決定づけるF関数を求める方法を見出した。この方法で得たF関数の極小条件を調べることで、解析は複雑になるものの、これまでに2種類の用途のモデルで得られている結果と同様の結果を導出できることを明らかにした。 2.非一様な土地利用パターン形成過程の解析 昨年度までのモデルの解析においては、土地利用用途比率が都市地域全体にわたって一様になると仮定できる場合を中心に分析してきた。一様状態から非一様な土地利用パターンが形成されるメカニズムを調べ、たとえ、一様状態になっても、ある条件のもとでは、「ゆらぎ」と呼ぶわずかな土地利用変化が生じると一様状態から乖離していき、ある用途の比率が高い地域と低い地域に分離していくことが判明した。 3.確率論的都市モデルの体系化 本研究の最終年度にあたり、確率論的都市モデルを再検討し、理論的枠組みの整合性を計るとともに、従来、仮定してきた条件の一部が仮定せずに導出できるなどの修正をおこなった。また、体系化していく段階で、確率論的都市モデルが統計物理学と極めて類似していることが判明し、都市解析と統計物理学との学際的研究領域の必要性を示した。
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