平成15年度は、研究代表者と分担者がデジタルカメラにより、北陸地方、九州地方、関東地方の事例収集をおこなった。研究代表者はさらに、北陸地方での事例として、雁木通りの実測調査をおこなった。 研究代表者の黒野は、雁木通りが残存する、上越市高田と新潟市下大川前通の2地区を対象に、通りと住宅の実測調査をおこない、併せて通り沿い敷地の所有権の変遷を確認した。その結果、明治初期の地籍図作成時に、雁木通りが私有地として位置づけられた上越市高田では、現在も雁木通りが継承されていることを把握できた。一方、雁木通りが公道の一部として位置づけられることの多かった新潟市下大川前通では、道路整備の際に、多くの雁木が取り払われ、2階を張り出した形の町家が並んでいること、を把握できた。これは、所有権の範囲設定が地区の空間構成に大きく影響を及ぼすことの証左となっている。 また、上越市高田の住宅実測調査では、2カ所で「アイヤ」を確認することができた。これは、もともとの1軒を内部間仕切りにより間口を狭めた2軒として使用する住まい方である。すでに確認された高岡市金屋町と同様、平入り町家に特有の現象であり、雁木通りの利用度を高めている。高田では、アイヤがおこなわれた場合にも、地区の居住単位として、吹き抜けのチャノマとザシキ・裏庭のセットが保たれていることを把握した。 また、研究分担者の菊地は、築後平野における水路を利用した集落の対ポロジーをおこなった。なお、研究分担者の伊藤は、武蔵野における街路村の現況調査をおこなった。
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