研究課題
基盤研究(C)
街路と水路を共用空間とする町並みとして、上越市高田の雁木通り、柳川市の掘割水路、武蔵野新田のケヤキ並木を対象とした。高田では、雁木が現在も更新されている大町通、本町通、仲町通の三つの旧町人地を対象とした。実測調査とヒアリングにより、近代における町家と雁木の展開過程を把握した。この結果として、住宅のレベルでは、近代にチャノマ上部の吹き抜けが形成され、雁木との対照により、町家が街区とつながりを保ってきたこと、街区のレベルでは、通りによらない帯状の利用区分が存在し、それぞれの利用帯ごとに相隣関係をつくりだしていることを把握した(担当:黒野)。堀割水路を共用空間とする町並みとして、柳川市の宮永町、常盤町、鬼童町を対象とした。いずれも旧武家屋敷である。屋敷レベルで水系の分析をおこない、結果として、三つの地区それぞれで異なる水系システムが形成されていることを把握した(担当:菊地)。並木道を共用空間とする町並みとして、武蔵野新田集落の砂川村、小川村、野中新田、榎戸新田を対象とした。これらの農村集落における屋敷構えと街道の対応関係を分析した。その結果、敷地間口と水路の設定により、主屋の向きや付属屋の並びに相違が生まれ、特定の位置の樹木がウツギやカドギと呼ばれ、屋敷内で象徴的な意味を持ち、並木をなすことを把握した(担当:伊藤)。これらを相互比較することにより、水・道・緑という共用空間への屋敷の側からの働きかけを統一的に把握した。そして、これらの伝統的な共用空間が私有地の要素を地域社会に開くことにより形成されてきたことを明らかにした。昭和30年代以降には、上位のシステムが変更されることにより、こうした伝統的共用空間は崩壊してきた。その一方で、屋敷の側からの新たな意味づけがなされていることを把握した。
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