平成12年都市計画法改正によって都道府県がその実施を判断することとなった区域区分制度が、創設当時から問題点を抱えていたにも関わらず、一定程度の市街化抑制効果を地方都市において果たしてきたことを検証することで、区域区分の廃止に向かう安易な風潮に対して警告を発する実証的資料を提供することが、本研究の目的である。 本年度は、人口10万人以上の地方都市100に対して、既に所有している現在の都市計画図を縮小したものを送付して、当初線引きの区域と線引き直前の用途地域指定の範囲を記入してもらった。結果として、昭和50年以前に当初線引きを終えている89都市全てについて、これらの情報提供を受け、地理情報システム内に、レイヤーとして空間情報化した。 これをもとに、線引き直前用途地域の区域と当初線引き時の市街化区域の区域の重複、除外、追加の状況を空間的、定量的に把握した。この結果、当初線引き時に相当の面積を拡大して指定した都市、直前の用途地域とほぼ同じ範囲を指定した都市、用途地域の区域から広い範囲を除外し他の地域で市街化区域を拡大した都市、などに89都市を類型化した。 さらに、当初線引きの市街化区域と現在(ほぼ4回の定期見直し後)の市街化区域を比較し、その面積拡大の状況と市街化区域内人口密度の変遷から、89都市を同様に類型化した。 これら二つの考察を重ね合わせて、現在、次年度に詳細な分析をする典型都市を抽出する作業に取りかかっている。 一方、当初線引き当時の旧建設省都市計画課で作業に直接関わられた課長補佐及び係長から当時の実情についてヒアリングを行うことができ、さらに貴重な資料の提供を受けており、ここから得た知見をもとに、次年度の研究を深めていくこととしている。
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