研究概要 |
昨年度の延焼モデルの研究成果は,オランダで開催された国際会議で発表し,その論文はSpringerより出版された。今年度は以下を実施した。 1)GISと統合した延焼シミュレーションシステムの開発:延焼モデルとGISの統合を行い,建物の耐火化,広場整備,道路拡幅等の市街地整備による延焼抑止効果を住民にわかりやすく目に見える形で提示できるシステムを開発した。現状市街地での延焼シミュレーション結果と市街地整備後の結果をビジュアルに比較できるシステムとした。ただし,現時点でシステムには消防水利の新規配置や消防力は反映できていない。 2)災害危険度判定手法の改良とGISへの実装:街区単位の延焼と避難の危険度評価を国のマニュアルを踏襲した方法で情報提供できるシステムとした。しかし,本手法は東京のような密集市街地では有効と考えられるが,本研究が対象とする地方都市の問題市街地には必ずしも適切な手法でないことが分かって来た。とくに避難危険度については有効な評価方法を考える必要がある。 3)二川・大岩まちづくり協議会でのプロトタイプシステムの運用実験:1)で開発したプロトタイプシステムをワークショップの現場に持ち込んで運用実験を試みた。実験は,運用環境による有用性の違いをみるため,ノートPC4台を使用し,プロジェクタでモニタを投影する2グループとモニタを直接見て話し合う2グループにわけて実施した。ビデオ撮影も実施した。実験結果の分析を現在進めている。ワークショップ終了後のアンケート結果によると住民は概ねシステムの有用性(市街地整備による延焼抑止効果の確認)を評価していた。 運用実験結果の分析考察を行い,そこから得られるシステム開発の課題を抽出し,これらの結果を国際会議で発表,査読付き論文としてまとめる予定である。またGUIによる視覚的情報提供方法の検討も加えていく。
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