本研究は調査範囲を韓国に広げ、第一、東アジア文化圏の居住の共通性(ネットワーク居住)を明らかにすること、第二、ネットワーク居住からみた住宅と住み方の日韓比較を通して国別居住特性を解明することを目的とする。そのために第一、これまでの研究で明らかにされた日本におけるネットワーク居住の成立形態を東アジア的視点(伝統的視覚)から再照明する必要がある。今回、国勢調査や住宅統計調査結果等のマクロデータの世帯類型や居住状況分析からネットワーク居住調査データや分析枠を見直した。なお、これまでばらばらに実施してきた調査データ(仙台、宮城県北4市町村、東京、岡山、福岡、四国4県の都市および高齢過疎地域等)の再集計分析のために統合的な分析モデルを考案した。このモデルにより日本におけるネットワーク居住関係を整理・類型化する作業を行っている。第二、東アジア文化圏の居住の共通性を明らかにするために平成15年11月19日〜27日、韓国の都市調査(釜山、馬山、晋州、麗水、平澤、ソウル)を実施した。調査方法としては各地域所在の大学の学生に配布し、持ち帰って世帯主に記入してもらう方法を用いた(回収率は6割弱、有効部数222部)。調査内容は、都市家族の分散居住実態(同居・非同居家族、家族意識範囲)、ネットワーク居住の実態(非同居子供・親・親族世帯との分散距離、援助・交流関係、今後の居住志向)、住宅と住み方(間取りと使い方、住宅の機能・役割、住み方)、非血縁との関係等で、日本の調査項目と一致させている。分析結果から韓国都市部の家庭における分散居住化現象の一方で、家族・親族間の強い絆を確認することができた。つまり血縁を中心とする広い範囲の家族意識に基づいたネットワーク居住の形成であり、引き続き農山村部や大都市部の調査により地域間居住の連携を解明していきたい。
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