本年度は、戦後復興期から「建設業法制定」までを期間として、戦時中までの建設業に対する統制から、どのように、民主化と復興建設の中で、斯産業が扱われてきたか、行政機関の対応、業界団体の活動状況、そして建設業法の制定に至るまでの国会の審議を中心に研究を行った。 そして今年度の研究からは次のような知見が得られた。建設業を所管する行政組織にあっては、商工省の該業務を受け継いだ戦災復興院、その後の組織改変による建設院、建設省が主管官庁の主軸であったが、終戦後の産業・経済復興に特化した「経済安定本部」でも、莫大な戦時復興の役割を果たす建設事業を統制する観点から、各種調査が実施され、同本部でも建設業法の草案がつくられていた。また、連合軍工事を担当した「特別調達庁」は、工事発注に対して、建設業者の資格を決定していた。 業界団体の活動状況では、都道府県レベルの組合の活動は、建設業の改善化に直接関係なく、全国レベルでの連合会的組織が、新しい建設業の業態を検討し、行政機関に積極的に働きかけていた。内容としては、業界の社会的認知が主であり、片務性からの脱皮を中心に、業界活動を法的に位置付ける「建設業法」や所管官庁の「建設省」設置に対して、自身の組織内で詳しい研究が行われていた。この組織の代表としては、「日本建設工業統制組合」「日本建設工業会」「全国建設業協会」が挙げられる。 国会での建設業法の審議は、原案作成に対しては、建設業の特殊性(この理由で、戦前にあっては業界独自の法令がつくれななった)が前提となり、具体的審議内容としては、戦前の許可制でなく登録制としたことの是非、建設業の身分保障、元請・下請の二重構造等が主たる話題として論議され、法令の制定に至った。 本研究から得られた知見としては、戦後の建設業法の制定にあっても、業者の資格(経営、財務、技術)や職別工事業の取り扱いは、戦時の統制の中での政策や検討事項が深く関与していたことが挙げられる。
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