本研究は、戦後、アメリカによりアジア地域に大量に建設されてきた米式住宅を分析対象として、「アジア地域の居住環境の近代化を検証」、「持続的な住宅のありよう・ありかたの考察」、「専門知と生活知の有機的調和」を目的とした一連の研究の一部である。 平成15年度は、沖縄県内に存在する米式住宅の現存住戸数、再生住戸数、転用住戸数といった実態と変動、居住者アンケート調査による居住意識に関する調査を行った。また、米式住宅を供給した開発業者、計画を担当した設計事務所に対してヒアリング調査を行うとともに、計画や施工に関わる建築・施工図面や発注図書といった史的文献などの収集・調査も同時に進めた。 その結果、個々の再生・転用された住宅の平面・立面・断面・構造・材料など形態の特性や、居住者ニーズ調査による各住空間における住みこなし上の問題点も明らかになってきた。特に、これまで照射されてこなかった外部空間(住宅の庭)に関して、経年変化による一定のデータ蓄積を得ることができた。 さらに、今後の歴史的住宅地としての再生や保存修景のために必要とされる要件に関して、米軍基地の跡地利用が促進されているフィリピンのクラーク、スービック両基地を調査する事により、ストック活用に関する可能性及び歴史的住宅のエコミュージアムサテライト施設への展開の可能性と問題点の検討を行うことができた。 ここで得られた知見は、今後の実践的行為に展開させるための幾つかの指針としたい。
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