本研究は、アジア地域における「米軍関連居住施設」に着目することにより、その移植と土着化の過程において起こった伝統的居住文化と近代的居住形式の衝突を検証することにより、アジア地域の居住環境の近代化の過程と、今後の「米軍関連居住施設」の社会的ストックとしての活用の方策を考察するものである。 上記研究目的に沿い、平成17年度は歴史的住宅地の再生や保存修景のために必要とされる要件の調査・分析を進めた。ここでは、前年度の沖縄県における調査をもとに得られた知見を基礎情報として、基地撤退後、基地跡地の開発が進んでいるフィリピンにおける「米軍関連居住施設」を調査対象とした。フィリピンでは、旧米軍基地用地と施設の殆どが国有となり公社等の公的サービスがその事業推進の主体となったため、高次元の様々なガイドラインや活用マスタープランが作成されている。この公的サービスによる施設の持続的メンテナンスは、沖縄をはじめとする日本における類似施設の活用を考察する上でも示唆的であった。 このような先進事例の分析により、今後の「米軍関連居住施設」の歴史文化財的保存活用に際して、明確なデベロップメントプランの作成、施設情報の公開、デザインガイドラインの設定などの課題を抽出した。さらに、フィリピンにおいても実現されていなかった地域住民・地域との包括的連携を実践するために、PRA等の手法を用いた早期のしくみづくりが望まれると指摘した。
|