研究概要 |
本研究は、聴覚障害者の施設利用環境の改善のために、聴覚障害者の抱えている情報バリアの要因を明らかにし,聴覚障害者の情報入手及び円滑なコミュニケーション環境の改善手法について効果的な知見を得ることを目的としている。平成16年度は、(1)ろう学校在籍児童・生徒のコミュニケーション手段の実態調査と、家庭生活、学校生活、社会生活におけるバリアの認知状況、(2)先端的ろう学校における聴覚障害対応整備状況の調査、(3)日常的な建築施設における音環境調査について予備的実験、等を行った。結論として、(1)、(2)の調査では、幼児期に一定の補聴器を活用することで、コミュニケーション環境の改善が見込まれることが判明した。しかし、一方で人と人の会話、後方からの自転車のベルの音が聞こえないなど、日常生活の不便さも改めて浮き彫りになった。特に鉄道や医療機関でのバリア感は既往文献研究と同様な結果が得られた。また、聴覚障害者の専門教育施設であるろう学校でも十分な聴覚障害児・者への対応が用意されていないことも判明した。こうした調査から、聴覚障害者のコミュニケーションバリアの要因と手話や聴力を補完する多様な設備機器の利用実態が明らかとなった。(3)の調査研究は、今後の継続研究課題であるが、施設における音環境のコントロールの必要性もさることながら、公共空間における最も重要なコミュニケーション確保としては、多様な視覚情報の提供が基本となることが再確認された。また、ろう学校で実現しているように、単に文字やピクトによる情報伝達だけでなく、建築空間設計においても施設を安全に利用するための方法が多様に存在することが分かった。また、上記の各種調査から、非常時、災害時の情報入手手段の整備が遅れており、今後の研究課題であると同時に、消防法をはじめとする法的整備の必要性が確認された。
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