研究概要 |
本研究は特別養護老人ホームの建替えに際して,「従来型多床室」から「ユニット型全室個室」の小規模処遇への環境移行に伴う,入居者の生活展開の変化(場所・行為・姿勢等の非参与による行動観察)と,入居者・施設職員双方の活動量の変化(アクティグラフによる微細な体動活動の測定)を調査し,日常行為の順応の過程を時系列的に比較検討し,施設更新時での居室の個室化に関する建築計画的な基礎資料を得ることを目的とする。 環境移行は1次(従来型4床室からユニット型2床室)と2次(ユニット型2床室からユニット型個室)の2段階にて行なわれるが,本年度は1次環境移行後(ユニット型2床室)の調査を2回にわたり実施した(2004年5月及び2005年1月)。調査の途中段階であるため,現時点では主たる考察を行なうまでには至っていないが,これまでに検討できた内容について報告する。 1.全入居者の生活展開では,プライベート領域での滞在が約6割から4.5割に減少し,セミプライベート領域での滞在が3.5割から5割へと上昇した。これに伴いベッド上の滞在が約6割から4割に減少して,車いすやいすでの滞在が3.5割から5割へと増加した。一方で,日常の行為内容については明確な変化は見られなかった。 2.アクティグラフによる介護スタッフの体動活動量はあまり個人差がなく,220〜280回/分の体動活動数が日勤労働時間の約7割,そのうち240〜260回/分が約3割を占めていた。また,移行前後でほとんど変化はなく,介護労働量に対する影響自体は小さいものと推察できた。入居者の日中の体動活動数は0〜360回/分の範囲に分布しており,明確な個人差も観察された。移行前後では,個人ごとに異なった増減の様子が見受けられたが,この詳細については解析の途中段階である。
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