初年度は、地域住民の手で自主的に保守管理されている備後福山地域に現存する吹き放し堂の保守管理の仕組みや継承手法を考究する堂の客観的な位置づけ資料を得るため、備後福山に現存する吹き放し堂の継承状況を堂行事の実施状況と関係住戸による堂の利用状況という観点から分類し、その区分の判別要因を数量化II類を用いて検討した。すなわち、福山市内に現存する四方吹き放しの四つ堂形式の84宇を分析対象とし、堂の立地特性、関係住戸の特性、堂と関係住戸を取り巻く地域特性を指標化した堂の継承に影響を及ぼす7つの要素を設定した。堂の継承状況は<I群>継承、<II群>関与、<III群>放置に区分し、3通りの組合せにより判別分析を行った結果、次のことが判明した。 (1)吹き放し堂の3つの継承区分を判別する際に強い規定力を示す要因として、<I群>継承と<II群>関与では関係住戸の組織タイプと地理的環境タイプを、<I群>継承と<III群>放置では地理的環境タイプと高齢化区分を、<II群>関与と<III群>放置では関係住戸の組織タイプと町内会戸数をそれぞれ抽出することができ、3通りの継承区分間における判別要因は相違することが指摘できた。 (2)判別分析の結果、継承区分の誤判別は<I群>と<II群>の場合で72例中10例、<I群>と<III群>の場合で63例中10例、<II群>と<III群>の場合で誤判定なしで、いずれも高い的中率が得られ、これらの判別要因に注目することによって継承に関する諸条件の違いを理解することができた。 以上のように、継承に関する吹き放し事例の全体像や継承の諸条件を明らかにすることができたことを踏まえ、次年度、堂の継承手法や住区密接型施設の管理手法について究明していくこととする。
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