本研究は近世城下町の設計原理の解明を目的とする。その設計理念を明らかにするために、次の4課題に焦点を絞り込んで考察する。(1)城郭の位置決定法(2)城郭・城下町の主要施設の配置法(3)町割・街路の線引きの方法(4)街区割の基本形。 以上の研究課題に対して、これまでの本研究の成果を踏まえ、次の4仮説をたててこれを実証する。(1)城郭の中心天守の位置決めは、藩主崇敬の古社古刹と視軸ならびにα三角形60間モデュールを用いて決定したのでは。(2)天守以外の門・櫓・番所ならびに古社古刹の配置は視軸とα三角形の60間モデュールを用いてレイアウトしたのでは。(3)町割を決定づけた濠と街路の線引きは主要施設や周辺の山頂、古社古刹を基点とするヴィスタでは。(4)曲尺の表目と裏目でつくるα三角形が設計施工の全般を通して関連していたのでは。以上の独創的な仮説を置き、これの実証を試みる。 本年度は本研究助成の2年目であり、昨年に引き続き基礎資料収集を主とし、以下の基礎調査を実施した。(1)城郭・城下町建設に関する史資料の収集と基礎調査(市史、県史、絵図)、(2)復原図作成資料(1/2500、1/10000、1/50000地形図、復原図、遺構調査図)(3)古社・古刹の史資料(神社誌、仏閣誌)ならびに古社・古刹の向きの調査である。 本年度は5月に北関東地方(栃木・茨城)、8月に東海地方(静岡・神奈川)、9月に東北・北海道地方(青森・秋田・岩手・北海道)の基礎調査を実施した。 また、分析段階、例えば復原図作成、仮説の実証作業の段階で不明な点の補足調査が必要となる。また、仮説の論拠となる文献や事実の確認作業が生じる。このような補足調査として、本年度は8月に福山城下町、龍野城下町、篠山城下町に、また、比叡山や高野山、久能山や日光の調査に出かけた。 研究成果の発表については次頁に示した通りである。本年度は助成金交付2年目であり、以上に記載したように史資料収集・基礎調査に重点を置いた。分析や論文の発表は次年度以降に重点を置いている。
|