研究概要 |
平成16年度は、前年度に引き続き、資料・史料の収集とその読み込み・分析とに多くの時間が費やされた。 白井は、国内の主要な図書館等で、新旧文献のコピーを収集し、さらには、ここでは入手し難かった古書等の直接の購入を行った。とりわけ、ウィトルウィウスの六原理のうちでも、いわゆる均斉(釣り合い)美の問題に関わるシュンメトリアとエウリュトミアをめぐる、フランスとイタリアを中心とした関連文献の収集に成果があったと言える。たとえば、1753年刊行のガストリエ・ド・ラ・トゥール(Gastelier de la Tour)によるDictionnaired' architectureや1797年刊行のフランチェスコ・ミリーツィア(Francesco Milizia)のDizionario delle Belle Arti del Disegnoの入手は貴重であった。さらには、数冊に及ぶウィトルウィウスについての研究書(たとえば、Gianluigi Ciotta篇:Vitruvio, nella cultura architectonica antica, medievale e moderna, Genova 2003等)は、今後の研究に多くの指針を与えてくれるであろう。資料・史料を収集すればするほど、際限のない拡がりの中に埋没して行きそうになるが、自身のテーマをウィトルウィウスと近世・近代フランス・イタリアの建築理論との関わりに絞り、そのル・コルビュジエの建築理論への投影の跡を見いだそうとすることで、一定の成果が期待されるものと考える。 村田は、前年度と同様に、ル・コルビュジエ関連の新たな資料・史料を収集し、「建築へ」を初めとするル・コルビュジエの初期の著作からのウィトルウィウス的原理の丹念な抽出を引き続き行った。 以下に、今年度の成果を踏まえた、成果報告書の概要(案)を提示したい。 序 ル・コルビュジエの中のウィトルウィウス 第一章 ル・コルビュジエの先達たち 第二章 建築における「均斉(釣り合い)美」をめぐる近世・近代フランス・イタリアの理論的系譜 第三章 ル・コルビュジエと近世・近代フランス・イタリアの建築理論 第四章 ル・コルビュジエとウィトルウィウスにみられる原理志向性の問題 結 ウィトルウィウス vs.ル・コルビュジエ
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