パリ郊外シュレンヌ市田園都市について、その住戸タイポロジーを分析するために、まず前年度に現地調査で撮影した住棟、住戸平面図から平面図約600点を清書し、衛生設備、台所と食堂の関係、居間の有無、寝室の独立性などを指標とし、さらに第1期工事(1921〜)、第2期(1927)、第3期(1930)、第4期(1931)、第5期(1931〜34)、第6期(1933)、第7期(1936〜39)という時系列のなかでどう変化したかを分析した。 分析の結果、初期はフロ・シャワーなど生活関連設備を共同化することを目指していたが、第2・第3期以降は設備の戸別化に向かったことが判明した。また初期は台所、食事室、居間を一体化した共同室(salle commune)を含むものが多かったが、これは19世紀の労働者住宅の形成に近い。しかし第3期以降はいわゆるLDK形式に移行したことなどをつきとめた。 これらはフランスの田園都市が、初期は労働者ユートピア的なものであったが、次第に機能的な近代住宅に移行したことを示しており、こうした変化がひとつの田園都市のなかにみられるのがシュレンヌ市のきわだった特徴であるといえる。 2004年12月から2005年1月にかけて再度シュレンヌ市の現地調査をおこない、シュレンヌ市関係の残りの資料を収集した。また次年度のための予備調査としてスタン市、プレ=サン=ジェルヴェ市の田園都市についても現地調査をし、関係者にヒアリングをし、図面資料の存在をつきとめた。
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