この研究では、カトマンズ盆地とその周辺の層塔の主体を占めるヒンドゥー教寺院の層塔に対象を限定して、その形態を集成して分析して類型を求め、同時に所在の知られる古写真を併せて既に失われた層塔を補って、歴史的な変遷を明らかにする。 既に現地調査で相当数のヒンドゥー教層塔を撮影しているが、今年度は1978年以来20年余りに亘って少しずつ集めたカトマンズ盆地のヒンドゥー教層塔の写真を、パタン、バクタプルの両都市について画像データとしてデジタル化した。資料の整理作業内容としては、次のとおりである。実測図面を含む図面を現在のAUTO CADで読み込み、MOに整理。写真のうち35ミリ・フィルムの多くは、フィルムスキャンを外注するとともに、35ミリの一部とブローニーサイズ以上のものは補助者によってPHOTO SHOPで読み込みデジタル画像化し、MOに整理。8mmビデオの画像をデジタル化しDVDに収納した。 同時に、所在を確認している古写真などの資料を収集するため、10月28日から11月3日までカトマンズ、パタンに赴いた。文化教育省の図書館で2冊のアルバムの閲覧を許可され、複写した。この他にも、所有関連情報を探った。カトマンズ盆地は、過去にたびたび震災を受け、近くでは1934年にはM8を越える地震が襲い、多くの塔が崩れている。したがって、現在の遺構だけを対象とするのでは不充分だからである。 さらに、カトマンズにおいて未調査であったビジュシュワリなど30件の層塔を調べるとともに写真撮影した。信仰の対象として生き続けている事例がほとんどであった。 また、建設過程に関する歴史資料はほとんど残されていないが、1点をパタンの建築家の家系から複写することができた。
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