研究課題
基盤研究(C)
近世初期に町が開かれた和歌山県橋本市の橋本は、町を開いた高野山の僧応其が秀吉から塩市の独占的な権利を認められ、これが近世を通じて町の経済的に支えた。当時さして広くはない町中には20軒余の塩問屋が軒を並べ、併せて材木問屋等も見ることができた。つまり近世における橋本は問屋を中心とする在郷町として発展したことが明らかとなり、現在の町並みには、近世に建築されたこれら問屋の建築遺構も幾棟か現存することが一連の調査で明らかとなった。調査では問屋の遺構を中心に建築調査を実施し復原考察を行うとともに、その建築的特色を抽出した。その結果、古くから長期間問屋を勤めた住宅では土間を比較的広く占める2列2室の構成に復原されるという結論を導いた。比較研究として、一般の商店と考えられる住宅の建築調査も実施したが、1列2室の形式が多いが、問屋の期間が短い住宅ではこの形態も多く見られた。なお、隣接する、川原町、東家の町においても比較調査を実施した結果、2列2室形の住宅は少数で、多くが1列2室の形式に復原された。一方、江戸時代における特権を剥奪されて以後、現状の問屋建築において塩問屋を営むものは1軒に過ぎなかった。建物が現存するものの内、住宅とされるものが4棟、店舗に転用されるものが4棟あり、明治時代以後に建て替えを受けたものが7棟、撤去が3棟確認された。店舗に転用されたものの内、2棟は分割を受けており、良質な住宅が形を変えながら現存することも確認された。また、建替えられたものの多くは戦前期の早い時期で、小売店舗など、時代の要請を受けた建替であることが確認された。
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Proceedings of Annual Meeting of Kinki Chapter, Architectural Institute of Japan
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