この本の著者は現在も謎のままであるが、著者の名前として示されているFrancesco Colonnaは38章からなるこの本の各章の初めの飾り頭文字を連結した折り句に隠されている。この物語は、ルネサンスにおける、自然と人間、宗教と芸術、神話と芸術、愛と霊魂の浄化、生と死、因果応報からの脱出など様々な問題をそのうちに内在させ、神話の多くの神々を分析することで明らかになる。すなわち、 1.この物語で二人の愛が成就するためにはアポロと双子の妹であるディアナをポーリアが信仰するわけには行かなかった。物語の構成上、次のような比較が可能である。 ポリフィーロ/アポロ、男性 理性、光、視覚 ポーリア/ウェヌス 女性 愛 盲目 触覚 2.この物語に登場する主要な神はギリシアにおけるオリュンポスの神々よりも古い起源を持つ神々であり、コロンナの試みは、その文体同様、既成の制度の打破にあったと考えられる。 美のイデアはコロンナによると宇宙の不断の調和的な動きと一致し、具体的に芸術的形態のシンメトリア、プロポーション、モドゥーロに反映され、さらに数はすべての美的現象の存在論的根幹へと達する。このことはコロンナがこの物語を創作するうえで、様々な言語の使用とテキストを補足する図版を使用するという非常にオリジナルなテキストを通して行っている。このような図版とテキストとの併用は、ウィトルウィウス、フィラレーテ、フランチェスコ・ディ・ジョルジョなどの影響が推測される。 一方でイメージのイコノロジーは文体も含めて、古典のモデル、すなわち人文主義によってなされた古代への回帰にもとづきながら、他方で古代の資料全体がポリフィーロの官能的、心理的葛藤の歩みとともに中世の光の美学にしたがって、コロンナによって概念的に提示され、展開されている。 以上、見てきたように、コロンナは同時代の芸術家、建築家、人文主義者から多くのことを学び、夢という半覚醒の状況のなかで物語を展開することによって、現実の世界では実現不可能な世界を、ローマ、ギリシア、エジプト、エトルスクなど異国、異教の過去に遡ることによって、博学な知識を駆使して描き出し、バロックからロマン派にいたるまで後の世代に大きな影響を与え続けている。
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