研究概要 |
本年度は、B2型強磁性金属間化合物CoFeの磁性と点欠陥の相関性を中心に研究した。40〜60%Feの組成領域につき773K〜920K(B2相)、1073K〜1173K(A2相)からの急冷試料に対し、4.2KでのSQUID磁力計による飽和磁化測定を行い、平均磁気モーメントの組成、急冷温度依存性を求めた。組成依存性については、磁気モーメントはFe濃度の増加に伴いほぼ直線的に増加を示したが、B2相領域ではおよそ51%を超えるあたりで勾配が緩やかまたは減少傾向へと変化し直線に折れ曲がりが見られた。一方、急冷温度依存性については、いずれの組成に対してもB2相領域で急冷温度増加に伴う磁気モーメントの減少が見られ、A2相領域でほぼ一定に達した。 得られた磁性挙動はB2-A2結晶構造相転移と明らかに関わっており、原子配列の規則性を表す長範囲規則度Sを通してその関係を調べた。その結果、磁気モーメントは長範囲規則度の自乗S^2に比例する事が分かった。周知のように、規則度Sは試料に内在する点欠陥(CoFe合金の場合には不正Co,Fe原子)の濃度を表しており、Sの低下は不正原子の増加を意味し、高温域ではS=0の不規則A2相に至る。即ち、急冷温度が下降するに伴って、Sが増加、つまり規則化が進行し磁気モーメントが増加する事になる。この時、最隣接原子間がCo-Feの異種対となる数も増加し、その数はS^2に比例している。従って、合金の平均磁気モーメントはCo-Fe原子対の数に依存していると言え、点欠陥の挙動が磁性状態を直接的に支配している事を本研究によって明らかに示す事が出来た。
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