研究概要 |
我々は,平成12年度の特定領域研究(A)(2)において,Ti_<45>Zr_<38>Ni_<17>混合粉末のメカニカルアロイング(MA)がアモルファス相を生成すること、さらに,その後の適当な熱処理を行うと、正二十面体準結晶相が得られること,そして,準結晶相粉末の水素ガスチャージでは水素吸蔵量が一般の水素吸蔵合金に匹敵する約60at.%となることを報告した.そこで、今年度の本研究では,Ti_<45>Zr_<38>Ni_<17>の元素粉末組成を基本としてZrとTiを置換した場合の混合粉末(Ti_<45+x>Zr_<38-x>Ni_<17>)のMA過程やその後の熱処理による生成相や得られた粉末の水素吸蔵特性の相違について主に調べた.MA後に熱処理をした粉末は,粉末の混合割合によらず全ての試料において準結晶相とTi_2Ni相の二相が生成した.そして,準結晶相の準格子定数は元素粉末中のTiの割合が増加(Zrの割合が減少)すると共に小さくなる傾向にあることが明らかとなった.これらの粉末のペレットを陰極電解水素チャージ(KOH溶液)すると、水素が準結晶格子内に侵入するため準格子間隔は膨張し,準格子定数は大きくなった.Ti_<53>Zr_<30>Ni_<17>元素粉末の場合では,水素チャージ後の準格子定数はチャージ前のものと比較して約7%増大し,この準格子定数の増大は水素吸蔵量で約64at%に匹敵することが明らかとなった.昇温脱離法による水素放出温度は粉末中のTi量の増加と共に高くなる傾向を示した.今後,これらの結果を反映して次年度以降に水素貯蔵を目的とする場合の準結晶の最適組成の探索を行う.
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