本研究は、テルビウム鉄系アモルファス合金の歪と構造緩和に関する時間因子の考察を行うために、これらの変化時間を精密測定し、さらに計算機実験により考察を深める研究である。主眼を歪と構造緩和の2つに置き、比較的短時間で変化を示す歪と、比較的長時間で変化を示す構造緩和の時間因子とそのメカニズムについて考察することを目的とした。 試料作製においては薄膜のため、必ずサブストレート上に合金の形成が必要になるが、このサブストレートの熱膨張と試料の熱膨張の差から誘起されるひずみ量の変化の追跡が本研究の第一課題であり、来年度にも継続きれる。 歪が誘起される原因の一つは、試料とサブストレートの熱膨張の差が大きいことである。試料の熱膨張が室温から約200℃の高温領域まで殆ど膨張しない、即ちインバー特性であり、一方、サブストレートに関する熱膨張は通常の有限な膨張係数である。この歪緩和の測定のためには高速なデータ収集装置が熱分析装置と連動して動く必要がある。本研究では、この装置構築のためにマイクロチップによる組み込みリナックスシステム構築に成功した。約0.0001sステップでの熱分析データ収集ができる装置を、今回は、独自技術で可熊にした。さらに、この装置を使うことで、比較的長時間で変化を示す構造緩和の時間因子のデータ収集にも十分対応可能である。 さらに、構造緩和の計算機レベルの考察を行うために、イーサネットアシストタイプの高速並列計算システムの構築にも成功し、次年度にその本格運用を始める。この装置によって、材料中のクラスター集合タイプ構造緩和に最適な計算処理の実現を予定している。
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