最初に、二硫化炭素硫化法を用いた硫化物合成装置を作製した。この装置を用いて、ミスフィット型層状硫化物多結晶試料の合成を試みたところ、ユーロピウムとルテチウムを除く希土類およびイットリウムにおいて、目的とするミスフィット型層状硫化物が合成された。X線回折による構造解析を行ったところ、希土類のイオン半径により、3種類の超空間群対称性が存在することが明らかになった。続いて、これらの試料の抵抗率および熱電能の温度変化を測定し、出力因子を評価した。室温近傍においては、多くの試料が同等な熱電特性を示すことがわかったが、イッテルビウム試料のみが他の倍近い大きな熱電能を示すことが明らかになった。この試料の抵抗率は他の希土類試料よりやや高いものの、計算された出力因子はこの系最大であった。製作した熱伝導率測定装置でこの試料の熱伝導率を測定したところ、室温においてビスマス・テルル系より低い値が得られた。 ホール係数測定により、イッテルビウム試料は他の希土類試料に対してキャリア密度が半分程度と小さく、また移動度も比較的小さいことが明らかになった。さらに、中性子回折を用いた詳細な構造解析により、伝導を担う層の変位変調が他の希土類試料に対して著しいことがわかった。
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