設備備品として購入したデジタルケルビンプローブを用いて、超高真空中で作製した試料の仕事関数測定を行うシステムを確立した。このシステムはあくまでも比較参照のための仕事関数既知試料の測定により作製試料の仕事関数を求めることができる間接方法であるため、計測時には常に参照試料の測定が必要になる欠点があり、同時に対応できる表面電荷量変化が少ないという問題点が存在することがわかった。不純物ドープCdWO4(010)単結晶の測定では、試料表面の電荷分布に不純物イオンが大きな影響を与えることからプローブと試料表面間距離、発振周波数同期条件が異なり、ドープイオンの種類にかかわらず想定外に大きい仕事関数値が実験的に求められてしまう。このシステムでの報告例は少なく、仕事関数測定に使用できる系、できない系を見極める必要があることがわかった。また、このシステムではプローブの表面積が大きいことから試料表面の均一性が問題点として残る。本システムを用いて、超高真空系内で作製したSi、アルカリ金属、酸素複合系試料の仕事関数測定を行うことができ、化合物の表面被覆率を制御することで従来報告された0.8eVより小さな0.7eVを値の実験的に得ることができた。この系では微粒子が均一に分散されていることが電子顕微鏡写真により明らかとなった。現在、冷電子放出材としての機能を探っている。 次に、パルスレーザー堆積法で作製した不純物ドープCdWO4薄膜の発光強度増加に関する結果を学術誌に報告した。同方法で作製されるSi微粒子の終端化に及ぼすレーザーフルエンス(単位面積あたりのレーザー強度)の影響を検討し学術誌に報告した。ゼオライト細孔内に作成したSi微粒子の室温可視発光の時間分解測定を行い、ゼオライトとSi微粒子間のエネルギー移動について検討した結果を報告した。ゼオライトのバンドギャップを始めて実験的に求めた。これらの系での仕事関数測定により、半導体のp型n型を判別できることになり、実験計画中である。
|