研究課題
超イオン導電ガラスにおいて、中距離構造はイオン輸送現象でどのような役割を果たしているのであろうか。この疑問を解明することが本研究の目的である。本年度の研究では、酸化物ガラスとカルコゲナイドガラスのネットワーク構造を比べたとき、可動イオンの添加に対する振舞いが質的に異なること見出した。例えば、AgI-Ag_2O-B_2O_3系のような酸化物ガラスにおいては、中距離構造を反映するFSDPの波数の値はAgIの増加と共に減少するが、Ag_2S-GeS_2のようなカルコゲナイドガラスにおいては、FSDPの波数の値はAg_2Sの増加と共に増える。また、LiI-Li_2O-B_2O_3のようなLiイオン導電性ガラスのFSDPの波数の値はLiIの添加と共に増える。これらの振舞いや塩のドーピングによる網目構造の膨張は、ガラスの平均的電気陰性度およびガラス形成能と密接に関係していることも明らかにした。本年度行ったその他の研究の一部を以下に記す。研究は現在も進行中であるため、得られた研究の成果がまだ論文の形にはなっていないものもある。それらは追々論文として公表していく予定である。研究成果の一部は日本物理学会、固体イオニクス討論会、固体イオニクス・アジア会議、液体およびアモルファス金属国際会議、材料熱物性研究のニューフロンティア国際シンポジウムなどにおいて発表された。1)Ag_2O-B_2O_3系ガラスの構造の組成依存性と熱力学的性質をモンテカルロ法により調べた。2)アモルファスAg-Ge-Se系の構造、銀イオンの拡散、ガラス化機構などを分子動力学法により調べた。3)過冷却液体Ge-S系における粘性の組成依存性と、アモルファスGe-S系へのAgの光ドープの起こりやすさとの関連を調べた。
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