本研究の目的は、ナノレベルからマクロレベルで制御された3次元的な階層的構造を有するポリマー・セラミックス複合材料の新規な合成方法の提案とそれを利用した生体機能性材料の開発である。平成15年度には第1段階として以下の2つの成果が得られた。 第1として、自己組織化的に形成される周期的な空間パターンを生体機能材料として期待されるリン酸カルシウム系セラミックスの合成に適用することを試みた。比較的取り扱いが容易なポリアクリル酸などの吸水性高分子をゲル状マトリックスとして用い、この反応場においてマトリックス中の官能基、原料の種類、温度、拡散と反応条件などのパラメータをコントロールすることで自己組織化空間パターンを制御するための基礎的な知見を得た。その結果、ナノレベルの周期的沈殿現象および生成する結晶相の制御が可能となり、骨類似なナノおよびミクロンレベルの生体親和性ポリマーとセラミックスの絡み合い構造構築のための基礎技術が確立された。 第2には、ポリマー・セラミックス複合化の基礎となるゲルマトリクス内における結晶成長についてモデル系を構築して検討をおこなった。種々の結晶成長を検討した結果、ゲル内の結晶形態に影響をおよぼす因子として、マトリクスによる溶質の拡散制御と、ゲル化剤分子の結晶表面への吸着による成長制御が重要であることを見出した。前者は、拡散律速環境を形成することで微細な分岐やねじれ構造を誘起し、後者は、出現する結晶面の選択性やキラリティの制御に有効である。これらの基礎的知見は、生体セラミックス・高分子複合における自己組織化的構造制御に有益な知見であると考えられる。
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