GeO_2ガラスを母体とする白色蛍光体を作製する過程で、MnイオンをZnイオンやMgイオンとともにGeO_2ガラスに添加することで、ガラスおよびガラスセラミックスの緑色および赤色蛍光体が作製できることを見出した。今後、GeO_2ガラスを母体とする青色蛍光体を見出すことで、これら3者から、より強い白色蛍光体が作製できると考えられる。 これら緑色および赤色蛍光体についての結果を具体的に示す。ゾル・ゲル法によりMnイオン含有および非含有Zn_2GeO_4ガラスおよびガラスセラミックス試料を作製した。Mnイオンを含まない試料は紫外光励起によってZn化合物に由来する青白い発光を示した。Mnイオンを含む試料は紫外光励起によってMn^<2+>の^4T_1→^6A_1遷移に帰属される強い緑色の発光を示した。この発光強度は、Mnイオン含有Zn_2SiO_4結晶試料と比べて、254nmの紫外光励起時ではやや劣るが、365nmの紫外光励起時では圧倒的に勝ることがわかった。また、Mnイオン含有および非含有MgGeO_3ガラスおよびセラミックス試料を作製した。Mnイオン含有セラミックス試料は紫外光励起下でMn^<2+>の^4T_1→^6A_1遷移に帰属される強い赤色の発光を示した。これらの試料には、ゾル・ゲル法特有の構造欠陥が生成され、それらが試料の蛍光特性の向上に重要な役割を果たすと考えられる。さらに、Mnイオン含有および非含有ZnO-MgGeo_3試料を作製した。Mnイオン含有ガラス試料は紫外光励起下で橙色の発光を示した。セラミックス試料はMnイオン含有MgGeO_3試料と同じ赤色発光の特性を示し、ガラスおよびセラミックス試料ともにそれらの発光はMn^<2+>の^4T_1→^6A_1遷移に起因すると考えられる。またこの系の試料は、1000℃などでの熱処理後において他の試料には見られなかった残光現象を示した。残光特性と、試料中の構造欠陥の量との間には関連性があることがわかった。 一方、緑色蛍光体xTb_2O_3-(100-x)GeO_3ガラスを作製し、組成と蛍光、残光特性の関連について検討した。波長254nmの励起光を照射したとき、緑色蛍光は、x=2の試料で最も強く、緑色の残光はx=1の試料で最も強くなった。また、Erイオン含有GeO_2ガラスのアップコンバージョン蛍光体に関して、アップコンバージョンの原因であるErイオン周りの局所構造を、立命館大学SRセンターの広域X線吸収微細構造ビームラインを用いて解析した。Erイオン含有量が少ないときは、Erイオンは酸素6配位構造を、それが多いときは酸素8配位構造をとっていることがわかった。Er-Oの結合距離は、6配位構造のとき長く、8配位構造のとき短い、という通常とは逆の傾向を示し、非常に興味深い。
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