エネルギー密度の向上と安全性の確保という相反する二つの要求を満たすことのできる電池として、無機系固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池は非常に有望である。しかしながら現在のところ、実用的な全固体電池が開発されているとは言い難い。これは固体電解質と電極材料との界面で起こる電気化学反応機構が、従来の電解質溶液を用いた電池の場合と異なるため、どのような電極材料が適切であるかについても十分な検討がなされていないためである。すなわち、従来の電解質溶液を用いた電池において優れた特性を示していた材料が全固体電池では使えない場合もあるし、また逆に溶液系では使えない物質でも全固体電池においては良好な電極反応を示す場合もある。本研究は、このような高いエネルギー密度が期待できる新しい電極材料と無機系固体電解質との界面における反応機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、電解質溶液を用いた電池系では電気化学反応をほとんど起こさず、電池正極材料とはならないと考えられてきた硫黄を正極に用いた全固体リチウム電池を試作し、その反応機構について検討した。その結果、正極として、硫黄と金属銅の混合物を用いることにより、流黄が充放電可能な二次電池の正極材料として機能するとともに、可逆容量として1000mAhg^<-1>以上の値を示すことを見出した。また、この硫黄と金属銅の混合電極中では、銅が触媒として機能することにより、硫黄が電極材料として機能し、電気化学反応が進行することを見出した。
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