研究概要 |
複合材料はその固体構造の異方性により、諸物性(力学、電気、熱等)に異方性を発現することが知られている。筆者は、高分子複合材料とその熱伝導の異方性に着目し、最新の測定法を駆使したミクロ界面の熱伝導性の測定にもとづき、力学場、電場、磁場による熱伝導超異方性材料の設計、開発の指針を得るとともに、ミクロおよびナノスケールの界面の秩序性と熱伝導異方性との相関を明確にすることを目的とした。 熱伝導性は,格子振動の拡散現象であるから,結合が強い方向によく拡散する.高分子材料は延伸配向によって長鎖方向への熱伝導性は大きく向上するが,これだけでは,逆に配向と垂直方向には悪化するので,垂直方向に,水素結合,イオン結合を導入し,新しい構造秩序を導入すること,または界面に熱伝導性フィラーを効率的に導入することで無駄のない三次元的な熱伝導性の向上あるいは異方性の付与が可能となる。この過程で、ミクロ、ナノスケールでの界面熱伝達の分布あるいは異方性の、全体に対する寄与の重要性が明らかになると考えられる。 今年度は、外場印可のもとに界面の熱伝達を制御して,高熱伝導性を付与する方法論の構築の一環として、I)熱伝導異方性材料の作成を、力学的配向場(100倍ゲル延伸)、高電場(1kV/Cm)下、高磁場下において行い、分子配向、分極配向、磁場配向と熱拡散率の間に相関が認められることを温度波熱分析法により、明らかにした。これは、分子の広がりと分子間相互作用を結晶構造以外の秩序性を三次元的に制御することで熱物性を向上させた例となった。 これらの外場により秩序性を付与された複合材料のミクロ界面におけるエネルギー授受の異方性を、赤外線位相画像法を応用することにより、明瞭な映像としてとらえる画像技術を確立し、同時にミクロスケール熱拡散率・熱伝導率測定の面内測定を可能とした。
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