研究課題
基盤研究(C)
1978年に本研究室で発見されたFeMnSi基SMA(shape memory alloy/形状記憶合金)は20余年の歳月を経て、2003年世界で初めてトンネル工事に使われ、溶接に変わる役目を果すことが実証された。この時点で締め付け力(ε→γ逆変態による回復力)は200MPaであった。平成15-16年度の助成による本研究では、従来用いられた手法を参考として、種々のFeMnSi基SMAに高速変形と熱処理を組み合わせて施し、締め付け力の更なる向上を計った。その結果、変形で導入された微細なBCC相を核としてBCC格子を基調とする高強度の微細粒が導入されることが判明し、透過型電子顕微鏡によるZOLZ(zero order Laue zone)およびFOLZ(first order Laue zone)diffraction patternの解析からαMn型χ相と特定された。また、超高電圧電子顕微鏡を利用した薄膜試料のピンポイント圧縮試験でαMn型χ相がGPaをはるかに超える強度を持つ事も見出され、このχ相を微細に分散させた新しいFeMnSi基SMAの強度は加工硬化によってGPaを超えることが分かり、この高強度化によって締め付け力(ε→γ逆変態による回復力)は従来のFeMnSi基SMAの2倍以上となり、450MPaに達することが判明した。そして、この様な高強度粒子の分散はγ→ε相変態によって支配される変形応力を大きく上昇させると同時に顕著な擬弾性をもたらすことが新たに見出された。本研究で当初目的としていた形状記憶合金としての課題からは離れるが、高強度FeMnSi基形状記憶合金における大きな擬弾性は、サイクリック変形におけるエネルギー吸収大幅な増加を意味し、耐震用構造材料としての用途も示唆している。
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